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兄弟から『相続分譲渡証明書にハンコを押して』と書類が届いた。『押すとどうなるの?危険はないの?』と手が止まりますよね。
結論から言うと、相続分の譲渡は、相続人としての取り分をまとめて他の人に渡すことです。遺産分割の話し合いから抜けられる一方、借金の返済義務は残るなど、知らずに押すと危ない面もあります。
この記事を読めば、相続分の譲渡の仕組みと、署名する前に確かめるべき点が分かります。
相続分の譲渡とは?相続人の取り分をまとめて譲ること
- 相続分の譲渡は、自分の相続分(遺産全体に対する取り分の割合)を、他の相続人や第三者に譲ることです。
- 譲った人は遺産分割協議に参加しなくてよくなり、譲り受けた人がその分も含めて参加します。
- 無償でも有償でも譲れます。
- 遺産分割が終わる前ならでき、家庭裁判所の手続きは不要です。
- ただし、亡くなった人の借金の返済義務は、債権者との関係では譲った人に残ります。
例えば、相続人が長男・次男・長女の3人で、遺産の分け方を長男に任せたいケース。次男と長女が自分の相続分を長男に譲れば、あとは長男一人で手続きを進められます。
『揉めたくないし、もう関わりたくない』という時に使われることが多い方法です。遠方に住んでいて、話し合いに参加するのが難しい相続人にも向いています。
譲った後で『やっぱり返して』と言っても、原則として取り消せません。気持ちが固まってから書類を作りましょう。
相続分の割合そのものは法定相続分とはで確認できます。
相続分の譲渡が向いているケース
相続分の譲渡が役に立つのは、こんな場面です。
- 相続人が多く、話し合いをまとめる人を一人に絞りたい
- 遠方に住んでいて、協議や書類のやり取りに参加しにくい
- 実家を継ぐ兄弟に、自分の取り分ごと任せたい
- 自分の取り分をお金に替えて、早めに受け取りたい
逆に、亡くなった人に借金があるかもしれない時や、遺産の中身がよく分からない時には向きません。
譲り受ける側も気をつけたいこと
相続分を譲り受けると、その人の分の財産だけでなく、借金の負担も引き継ぐ立場になります。相続人どうしの間では、譲り受けた人が借金も負担するのが原則です。
『取り分が増えてうれしい』だけで終わらせず、借金や未払いの税金がないかも確認しておきましょう。
相続放棄・相続分の放棄との違い
似た言葉が多くて混乱しますよね。違いを表にまとめました。
| 方法 | 手続き | 期限 | 借金の扱い | 誰に取り分が行くか |
|---|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 家庭裁判所に申述 | 知った時から3か月以内 | 引き継がない | 他の相続人(次順位に移ることも) |
| 相続分の譲渡 | 当事者の合意と書面 | 遺産分割が終わる前 | 債権者には返済義務が残る | 譲り受けた人 |
| 相続分の放棄 | 他の相続人への意思表示 | 遺産分割が終わる前 | 債権者には返済義務が残る | 他の相続人に割合で分かれる |

大きな違いは、借金の扱いです。家庭裁判所で相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったことになり、借金も引き継ぎません。
一方、相続分の譲渡は相続人どうしの約束にすぎません。お金を貸していた側(債権者)は、譲った人にも法定相続分に応じて返済を求めることができます。
もう一つの違いは、取り分を渡す相手を選べることです。相続放棄では取り分の行き先を選べませんが、相続分の譲渡なら「長男に」と決めて渡せます。
相続分譲渡証明書のひな形と書き方
相続分の譲渡は口約束でも成り立ちますが、後の手続きのために「相続分譲渡証明書(相続分譲渡証書)」を作るのが一般的です。
相続分譲渡証明書
被相続人 本籍・最後の住所・氏名・死亡日
私は、上記被相続人の相続について、私の有する相続分の全部を、下記の者に無償で譲渡しました。
譲受人 住所・氏名
令和○年○月○日
譲渡人 住所・氏名(署名) 実印を押す
有償で譲る場合は「無償で」を「金○円で」に書きかえます。譲り受けた人の署名・押印も入れておくと、合意したことがよりはっきりします。
- 被相続人の本籍・最後の住所・氏名・死亡日が戸籍のとおりか
- 相続分の「全部」か「一部」かが書いてあるか
- 無償か有償か、有償なら金額
- 譲渡人の署名と実印、印鑑登録証明書を添えるか
不動産の相続登記や銀行の手続きでは、この証明書と印鑑登録証明書を求められることがあります。提出先によって必要な書類が違うので、事前に確認しておきましょう。
相続分譲渡証明書は危険?署名する前に確かめたいこと
『ハンコを押すだけでいいから』と言われると、押してしまいそうになりますよね。押す前に、次の点を確かめてみてください。
- 亡くなった人に借金があると、債権者から返済を求められることがある
- 遺産の中身を知らないまま、取り分を手放してしまう
- 一度譲ると、原則として取り消せない
- 第三者に譲られると、知らない人が遺産分割に入ってくる
- 譲り方によっては、相続税や贈与税の扱いが変わることがある
例えばこんなやり取りです。
「財産はほとんどないから、相続分を譲ってくれればいいよ」
「念のため、遺産の一覧と借金がないかを見せてもらえる?」
遺産の一覧を見せてもらうのは、失礼なことではありません。預貯金の残高や不動産の固定資産税の通知書など、財産の分かる資料をお願いしてみてください。借金が心配なら、相続分の譲渡ではなく家庭裁判所での相続放棄を選ぶほうが安全です。
なお、相続人が第三者に相続分を譲った場合、他の相続人はその価額などを払って取り戻せる制度があります。知らない人が入ってきそうな時は、早めに弁護士に相談しておきましょう。
相続分の譲渡はいつまでできる?税金はどうなる?
相続分の譲渡は、遺産分割が終わる前までにします。分割が終わった後は、譲る「相続分」がもう残っていないからです。分割後に財産を渡すと、その財産の贈与や売買として扱われます。
法律上の期限はありませんが、相続税の申告期限は亡くなった翌日から10か月以内です。誰がどれだけ取得するかで税額が変わるので、譲渡するなら申告の前に済ませておくと手続きがすっきりします。
『とりあえず保留にしておこう』と先延ばしにすると、銀行の解約や登記も止まったままになることも。早めに決めておきましょう。
税金の面では、相続人どうしで無償で譲った場合、譲り受けた人が相続で財産を取得したものとして相続税を計算するのが基本とされています。有償の場合や、相続人以外に譲る場合は扱いが変わることがあるので、税理士に確認しておきましょう。
遺産分割協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方で解説しています。
遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えて相続税がかかりそうなら、相続分の譲渡で取得する財産が増えた人の税額も変わります。申告まで見据えて、税理士に相談しておくと安心です。
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よくある質問
相続分の譲渡と相続放棄はどちらがいいですか?
借金の可能性があるなら、家庭裁判所での相続放棄が安全です。借金の心配がなく、取り分を特定の人に渡したい時は相続分の譲渡が向いています。
相続分譲渡証明書に実印は必要ですか?
法律で決まった様式はありませんが、相続登記や銀行の手続きで使うため、実印を押して印鑑登録証明書を添えるのが一般的です。
相続分の譲渡はいつまでできますか?
遺産分割が終わる前までです。分割後に財産を渡すと、贈与や売買として扱われます。
まとめ
- 相続分の譲渡は、相続人としての取り分をまとめて他の人に譲ることです。
- 譲った人は遺産分割協議から抜けられますが、借金の返済義務は債権者との関係で残ります。
- 相続分譲渡証明書を作り、実印と印鑑登録証明書を添えるのが一般的です。
- 遺産の中身と借金の有無を確かめてから署名しましょう。
- 遺産分割が終わる前までにする必要があります。





