相続財産清算人とは|相続財産管理人との違いと選任が必要なケース

相続財産清算人とは何かと相続財産管理人との違いを解説する記事のアイキャッチ

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家族全員で相続放棄をしたら、残った家や預金はどうなるんだろう。債権者から「相続財産清算人を選んでほしい」と言われたけれど、何のことか分からない。そんな方も多いはずです。

結論から言うと、相続財産清算人は、相続人がいない時に家庭裁判所が選ぶ「亡くなった人の財産の後始末をする人」です。2023年4月の法改正で、それまでの「相続財産管理人」から名前が変わりました。

この記事を読めば、清算人がどんな時に必要で、誰が、いくらで申し立てるのかが分かります。

目次

相続財産清算人とは?まず結論

先に結論

相続財産清算人は、相続人がいるかどうか分からない時(相続人全員が相続放棄した場合も含む)に、家庭裁判所が選任する人です。亡くなった人の財産を管理し、債権者への支払いなどの清算をして、残った財産を国庫に引き継ぎます。申し立てるのは債権者や特別縁故者などの利害関係人か検察官で、費用は収入印紙800円・郵便切手・官報公告料5,582円、ほかに予納金が必要になることがあります。

亡くなった人に相続人がいれば、財産は相続人が受け継ぎ、借金の支払いも相続人が担います。

ところが、もともと相続人がいない、あるいは全員が相続放棄をした、というケースもありますよね。そうなると、財産を管理する人も、借金を払う人もいなくなってしまうんです。

そこで家庭裁判所が、利害関係人などの申立てを受けて選ぶのが、相続財産清算人です。清算人には、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることがあります。

「相続清算人」「相続管理人」と略されたり、「相続財産精算人」と書かれたりすることもあります。破産の手続きと混同して「相続放棄の管財人」と呼ばれることもありますが、正式な名前は相続財産清算人です。

「相続財産法人」とは

相続人がいるかどうか分からない時、亡くなった人の財産は、民法の定めにより「相続財産法人」という1つの法人として扱われます。

相続財産清算人は、この相続財産法人の代表者として財産を管理し、清算を進める立場です。聞き慣れない言葉ですが、『財産のかたまりに代表者を付ける仕組み』とイメージすると分かりやすいです。

相続財産管理人との違い

『相続財産管理人と相続財産清算人は何が違うの?』という疑問は多いですよね。ここがもっとも混乱しやすいところなので、順に見ていきましょう。

2023年4月から名前が変わった

2023年4月1日の改正民法で、相続人がいることが明らかでない場合の「相続財産の管理人」は、「相続財産の清算人」という名前に変わりました。

財産を守るだけでなく、借金の支払いや国庫への引き継ぎまで行う、という仕事の中身に合わせた名前にしたんです。

つまり、改正前に「相続財産管理人」と呼ばれていた人の多くは、今でいう相続財産清算人にあたります。古い解説や書類で「相続財産管理人」と書かれていたら、清算人のことを指していることが多いと考えてください。

今の「相続財産管理人」は保存のための人

一方で、改正後も「相続財産管理人」という言葉は残っています。

改正民法では、相続が始まった後なら段階にかかわらず、家庭裁判所が相続財産の管理人を選ぶなど、財産の保存に必要な処分ができるようになりました。こちらの管理人は、財産を守ることが役目で、清算までは行いません。

項目相続財産清算人相続財産管理人(改正後)
選ばれる場面相続人がいることが明らかでない時相続の段階を問わず、財産の保存が必要な時
主な役目財産の管理・債権者への支払い・残りを国庫へ財産の保存(守ること)
清算まで行うか行う行わない
改正前の呼び名相続財産管理人段階ごとに別々の規定
改正前の相続財産管理人が、改正後は相続財産清算人と保存のための相続財産管理人に分かれたことを示した図解

相続放棄と相続財産清算人の関係

相続財産清算人がよく話題になるのは、相続放棄の後です。

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになり、次の順位の人に相続人の立場が移ります。子が放棄すれば父母へ、父母もいなければ兄弟姉妹へ、という流れです。

その全員が放棄すると、相続人がいない状態になります。ここで清算人の出番になるんです。

放棄した人にも保存の義務がある

『放棄したんだから、もう家のことは関係ないよね』と思いますよね。ただ、そうとも言い切れません。

2023年4月の改正で、相続放棄をした人は、放棄の時に現に占有している財産を、次の相続人に引き渡すまで保存しなければならないと明記されました。相続人が全員放棄した場合の引き渡し先は、相続財産清算人です。

例えば、亡くなった親と同居していた子が放棄し、そのまま実家に住んでいるケース。清算人が選ばれて引き渡すまでは、その家を壊したり荒らしたりしないよう保存しておく必要があります。

清算人は誰が申し立てる?

相続放棄をした家族には、清算人を申し立てる義務はありません。

ただ、手元の財産を早く引き渡したい、空き家の管理から解放されたい、という場合に、利害関係人として申立てを検討することはあります。利害関係人にあたるかどうかは事情によるので、家庭裁判所や弁護士に確認してみてください。

相続放棄のくわしい手続きは 相続放棄の手続きの流れ でまとめています。

選任が必要になるケース

相続財産清算人の申立ては、次のような場面で検討されます。

清算人が必要になりやすいケース
  • 亡くなった人にお金を貸していた債権者が、財産から回収したい
  • 相続人が全員放棄し、空き家や土地を管理する人がいない
  • 遺言で財産を受け取ることになった人(特定遺贈を受けた人)が手続きを進めたい
  • 内縁の妻や介護をしてきた人が、特別縁故者として財産分与を求めたい

例えば、独身の兄が亡くなり、両親はすでに他界、ほかに兄弟もいないケース。兄と長く一緒に暮らしてきた内縁の妻は相続人ではありません。

それでも、清算人の選任を申し立て、手続きの後に特別縁故者として家庭裁判所に財産分与を求める道があります。

「相続人不存在」と特別代理人

債権者が、相続人のいない亡くなった人を相手に裁判を起こしたい時もあります。その場合に、清算人の代わりに裁判のための特別代理人を選んでもらう方法が取られることもあります。

どちらの手続きが合うかは事情によって変わります。迷う時は弁護士に相談してみてください。

申立ての方法と費用

申立ての基本は次のとおりです。

項目内容
申し立てできる人利害関係人(債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者など)、検察官
申立先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
収入印紙800円
郵便切手家庭裁判所ごとに異なる
官報公告料5,582円(家庭裁判所の指示があってから納める)
予納金財産の管理費用や清算人の報酬が足りない可能性がある時に納める

必要書類

主な必要書類は、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、父母や兄弟姉妹など相続人になりうる人の戸籍謄本、住民票の除票(または戸籍附票)などです。

ほかに、財産があることを示す資料(不動産の登記事項証明書や通帳の写しなど)と、利害関係を示す資料(金銭消費貸借契約書の写しなど)が必要になります。清算人の候補者がいる場合は、その人の住民票なども添えます。

戸籍の集め方は、相続放棄の場合と重なる部分が多いです。相続放棄の必要書類一覧 も参考にしてみてください。

予納金に注意

ここが大事なところです。財産の中に現金が少ない時は、申立人が予納金を納めることがあります。 清算人が財産を管理する費用や報酬を、財産だけでまかなえない可能性があるためです。

予納金の額は事案ごとに家庭裁判所が決めます。申し立てる前に、どのくらいになりそうかを家庭裁判所に聞いておくと安心です。

選任から清算までの流れと期間

清算人が選ばれた後は、次のように進みます。

相続財産清算人の手続きの流れ
  1. 利害関係人などが家庭裁判所に申し立てる
  2. 家庭裁判所が清算人を選び、選任と相続人捜索を官報で公告する(6か月以上)
  3. 清算人が、債権者や受遺者に向けて請求の申出を求める公告をする(2か月以上)
  4. 期間が終わったら、清算人が財産を売るなどして債権者に支払う
  5. 特別縁故者は、相続人捜索の期間満了から3か月以内に財産分与を申し立てられる
  6. 残った財産を国庫に引き継ぎ、手続きが終わる

改正前は、3つの公告を順番に行う必要があり、権利関係が決まるまで最低でも10か月かかっていました。改正後は公告をまとめて同時に進められるようになり、最低必要な期間が合計6か月に短くなっています。

『じゃあ半年で全部終わるの?』と思うかもしれません。6か月は最低限の期間で、不動産の売却などがあると、実際にはもっと長くかかることもあります。

相続財産清算人の選任から公告、支払い、特別縁故者への分与、国庫への引き継ぎまでの流れを示した図解

清算人ができること・できないこと

清算人が自分の判断でできるのは、財産を守るための行為が基本です。

不動産を売る、株を売る、といった処分をする時は、家庭裁判所の許可が必要になります。清算人の報酬も、家庭裁判所の決定に基づいて財産の中から支払われます。

残った土地や家はどうなる?

清算が終わって財産が残ると、国庫に引き継がれます。土地や建物も、財務局に引き渡される形です。

一方で、相続人が相続した後に「いらない土地を国に引き取ってほしい」という場合は、別の制度になります。いらない土地の手放し方は 土地だけ相続放棄はできる? で紹介しています。

清算人が選ばれるまで、家族がしておきたいこと

全員が放棄しても、清算人がすぐに選ばれるとは限りません。申し立てる人がいなければ、手続きが始まらないこともあるんです。

『それまでの間、何をしておけばいいの?』と不安になりますよね。放棄した家族ができることを、順に見ておきましょう。

財産を勝手に処分しない

放棄した後でも、亡くなった人の財産を売ったり捨てたりするのは控えておきましょう。保存の義務がある財産を処分すると、トラブルのもとになります。

例えば、実家の家財を片付けたい時。価値のありそうな物まで処分してしまうと、後で清算人や債権者との間で説明が必要になることがあります。

鍵・通帳・郵便物をまとめて保管する

実家の鍵、通帳、権利証、届いた郵便物は、ひとまとめにして保管しておくと、清算人に引き継ぐ時に話が早く進みます。

分かっている財産と借金をメモにしておくのもおすすめです。清算人が財産の一覧を作る時の手がかりになります。

債権者から連絡が来た時は

放棄した後に、亡くなった人の債権者から連絡が来ることもあります。その時は、相続放棄が受理されたことを伝えましょう。

例えば、こんなやりとりになります。

「亡くなった父の借入金について、ご連絡しました」
「相続放棄の申述が受理されています。受理証明書の写しをお送りします」

相続放棄申述受理証明書は、受理した家庭裁判所に申請して取れます。債権者が財産から回収したい場合は、債権者側が清算人の選任を申し立てることになります。

相続人がいる時は相続税も確認を

ここまでは相続人がいないケースの話でした。

ただ、家族の一部だけが放棄して、ほかの人が財産を受け継ぐことも多いですよね。その場合は相続税の確認が必要です。

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、相続放棄した人も人数に含めて数えます。例えば、妻と子2人が相続人で子2人が放棄しても、基礎控除は3人分の4,800万円です。

妻が受け継ぐ財産がこれを超えそうなら、申告が必要になることがあります。土地がある、生命保険金を受け取った、期限の10か月が近い。そんな時は、相続税に詳しい税理士に相談すると、放棄と税金をまとめて見通せます。

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よくある質問

相続財産清算人と相続財産管理人の違いは何ですか?

2023年4月の改正で、相続人がいることが明らかでない場合の「相続財産管理人」は「相続財産清算人」に名前が変わりました。改正後の相続財産管理人は、財産の保存を目的とする別の役割です。

相続放棄をしたら、清算人を申し立てないといけませんか?

申し立てる義務はありません。ただし、放棄の時に占有している財産は、次の相続人や清算人に引き渡すまで保存する必要があります。

相続財産清算人の申立て費用はいくらですか?

収入印紙800円、郵便切手、官報公告料5,582円です。財産の管理費用や報酬が足りない可能性がある時は、別に予納金を納めることがあります。

清算の手続きにはどのくらいかかりますか?

公告の期間だけで最低6か月かかります。不動産の売却などがあると、さらに長くなることがあります。

内縁の妻は財産を受け取れますか?

内縁の配偶者は相続人ではありませんが、特別縁故者として家庭裁判所に財産分与を申し立てる道があります。相続人捜索の期間満了から3か月以内に申し立てます。

まとめ

この記事の要点
  • 相続財産清算人は、相続人がいない時に家庭裁判所が選び、財産の清算をして残りを国庫に引き継ぐ人
  • 2023年4月の改正で「相続財産管理人」から名前が変わった
  • 改正後の相続財産管理人は、財産の保存を目的とする別の役割
  • 申し立てるのは利害関係人か検察官。費用は収入印紙800円・郵便切手・官報公告料5,582円と、場合により予納金
  • 相続放棄した人も、占有している財産は清算人に引き渡すまで保存する
  • 公告の期間は最低6か月。特別縁故者は満了から3か月以内に分与を申し立てる

申立ての詳細は、裁判所「相続財産清算人の選任」 で確認できます。

相続の手引き

相続の手引き 編集部

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