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『実家は長男が継ぐけど、それだと他の兄弟と不公平になる』。こんな時によく使われるのが代償分割です。
結論から言うと、代償金を受け取った人はその分の相続税を負担し、払った人はその分だけ相続税の対象が減ります。遺産分割協議書に書いておけば、贈与税はかかりません。この記事では、代償金の決め方と税金の計算がわかります。
代償分割(代償相続)とは?
代償分割とは、不動産など分けにくい財産を1人の相続人が相続し、その代わりに他の相続人へ自分のお金(代償金)を払う遺産分割の方法です。相続税は、代償金を払った人は取得した財産から代償金を差し引き、受け取った人は代償金を加えた金額で計算します。
代償相続という呼び方をされることもありますが、正しくは代償分割です。遺産の分け方には主に4つあります。
| 分け方 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 現物分割 | 財産をそのまま分ける | 預金や複数の不動産がある |
| 代償分割 | 1人が取得し、他の人に代償金を払う | 実家に住み続けたい人がいる |
| 換価分割 | 売ってお金を分ける | 誰も住まない家がある |
| 共有分割 | 持分で共有する | 一時的に決められない |
『実家しか財産がないから、分けようがない』という家族は多いですよね。代償分割なら、家を売らずに公平に近づけられるんです。
共有で持ち続けるデメリットは不動産を共有名義で相続するデメリットで解説しています。
代償金の決め方
何を基準に金額を決める?
代償金の金額は、相続人全員が合意すれば自由に決められます。基準としてよく使われるのは次のような価格です。
- 相続税評価額(路線価などで出す税金用の価格)
- 固定資産税評価額
- 不動産会社の査定額や、実際に売れそうな時価
- 不動産鑑定士の鑑定評価額
もらう側は高い時価、払う側は低い相続税評価額を基準にしたいのが本音です。
「実家の価値は5,000万円だから、半分の2,500万円はほしい」
「でも、相続税評価額だと4,000万円だよ。2,000万円でどうかな」
こんなふうに意見が割れやすいので、何を基準にするかを先に話し合っておくと揉めにくくなります。
払えるお金があるかを先に確認
代償金は、家を取得した人が自分のお金から払います。払えるあてがないまま合意すると、後で困ることになります。
足りない時は、分割払いにする、生命保険金の受取人をその人にしておく、といった工夫もあります。
代償分割で相続税は誰が払うの?
ここが大事なところです。代償金を払った人と受け取った人で、相続税の計算のしかたが変わります(国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算)。
- 代償金を払った人:取得した財産の価額 − 払った代償金
- 代償金を受け取った人:取得した財産の価額 + 受け取った代償金
つまり、代償金を受け取った人も、その分の相続税を自分で払います。払った側が全員分の相続税を負担するわけではありません。
評価額と時価がずれる時は調整する
代償金の額を土地の時価をもとに決めた時は、そのまま計算すると、受け取る側の課税価格が時価ベースで大きくなり、不公平になります。そこで、次の式で代償金の額を調整できます。
代償金の額 ×(相続税評価額 ÷ 代償金を決めた時の時価)
国税庁の例で計算してみます。相続税評価額4,000万円・時価5,000万円の土地を長男が相続し、次男に代償金2,000万円を払うケースです。
| 相続人 | 課税価格の計算 | 課税価格 |
|---|---|---|
| 長男(払う人) | 4,000万円 − 2,000万円 × 4,000万円 ÷ 5,000万円 | 2,400万円 |
| 次男(受け取る人) | 2,000万円 × 4,000万円 ÷ 5,000万円 | 1,600万円 |
調整後も、2人の課税価格の合計は4,000万円で変わりません。調整しないと、長男2,000万円・次男2,000万円になり、時価との差の分だけ長男の負担が軽く、次男が重くなってしまいます。

課税価格の合計が基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)以下なら、相続税はかかりません。相続人が兄弟2人なら4,200万円までです。全体の計算は遺留分と相続税もあわせて確認しておきましょう。
代償金の調整計算は、評価額や時価の根拠をそろえないと税務署に説明しにくいところです。土地の評価が絡む、相続人が3人以上いる、という場合は税理士に任せると計算と申告を一度に済ませられます。
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代償分割で贈与税がかかるケース
遺産分割協議書に書いていない
代償金は、遺産分割協議書に「代償金として払う」と書いておくことが大切です。書かずにお金を渡すと、兄弟間の贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。
相続後に別の約束で渡した
遺産分割が終わった後で、新たに「やっぱりお金を渡す」と決めた場合も、贈与と扱われることがあります。代償金の話は、遺産分割の中で決めておきましょう。
不動産で代償する時は所得税にも注意
代償金の代わりに、自分が前から持っていた土地などを渡すこともできます。この場合、渡した側はその土地を売ったのと同じ扱いになり、譲渡所得の所得税がかかることがあります。
代償分割の遺産分割協議書の書き方
代償分割をする時は、遺産分割協議書に次の内容を入れます。
- 誰がどの財産を取得するか(不動産は登記簿どおりに)
- 取得した人が、誰に代償金をいくら払うか
- 支払期限と支払方法(振込先、分割の場合は回数と金額)
- 相続人全員の署名と実印の押印
第1条 相続人長男は、次の不動産を取得する。(所在・地番・地目・地積を登記簿どおりに記載)
第2条 相続人長男は、前条の不動産を取得する代償として、相続人次男に対し金2,000万円を支払う。
第3条 前条の代償金は、令和○年○月○日までに、相続人次男の指定する口座に振り込んで支払う。
「代償として」という言葉を入れておくと、贈与ではなく遺産分割の一部だとはっきりします。分割払いにするなら、毎月の金額と最終の支払日まで書いておきましょう。
書き方の全体は遺産分割協議書の書き方で、ひな形とあわせて確認できます。
代償金を払わない時はどうなる?
『協議書に書いたのに、兄が代償金を払ってくれない』という相談もあります。代償金は、協議で決めた約束どおりに払う義務があるお金です。
まずは話し合いで支払いを求め、それでも払われなければ、裁判所の手続きで請求することになります。協議の段階で支払期限を決め、払える根拠を確認しておくのが何よりの予防策です。
よくある質問
代償金に相続税はかかりますか?
かかります。代償金を受け取った人は、その金額を自分が相続した財産に加えて相続税を計算します。払った人は、その分を差し引いて計算します。
代償金に贈与税はかかりますか?
遺産分割協議書に代償金として書いて、遺産分割の中で払う場合は贈与税はかかりません。協議書に書かずに渡したり、遺産分割の後で新たに約束して渡したりすると、贈与とみなされるおそれがあります。
代償金はいくらにすればいいですか?
相続人全員が合意すれば自由に決められます。相続税評価額・固定資産税評価額・時価のどれを基準にするかを先に話し合うと、まとまりやすくなります。
まとめ
- 代償分割は、1人が財産を取得して他の相続人に代償金を払う分け方
- 代償金を払った人は差し引き、受け取った人は加えて相続税を計算する
- 時価をもとに代償金を決めた時は、評価額 ÷ 時価で調整できる
- 遺産分割協議書に書かずに渡すと、贈与税がかかるおそれがある
- 協議書には支払期限と方法まで書いておく






