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『あの子にだけは財産を渡したくない』と悩んでいる方もいるはずです。暴力や暴言が続いてきた家族なら、なおさらですよね。
結論から言うと、虐待や重大な侮辱などがあった場合は、家庭裁判所の手続きでその人の相続権を失わせることができます。これが「相続人の廃除」です。
この記事を読めば、廃除が認められる条件と、認められなかった時の備え方が分かります。
相続人の廃除とは?
- 相続人の廃除は、被相続人(財産を残す人)の意思で、推定相続人の相続権を失わせる制度です。
- 対象は遺留分のある相続人(配偶者・子・父母など)で、兄弟姉妹は対象外です。
- 生前に家庭裁判所へ請求するか、遺言書に書いておく方法があります。
- 家庭裁判所は慎重に判断するので、単なる不仲では認められにくいです。
推定相続人とは、今の時点で亡くなったら相続人になる人のことです。この推定相続人を相続から外すのが廃除で、「相続人排除」「相続排除」と書かれることもあります。
『遺言で全部ほかの人に渡すと書けば済むのでは?』と思うかもしれません。ただ、子や配偶者には遺留分という最低限の取り分があるんです。
遺留分は、相続人が父母など直系尊属だけなら財産の3分の1、それ以外なら2分の1を全体の割合とし、法定相続分で分けます。遺言で外しても、この遺留分は請求されることがあります。
廃除が認められると、遺留分も含めて相続権がなくなります。ここが遺言だけで済ませる場合との大きな違いです。
相続廃除の要件|どんな時に認められる?
廃除の理由として民法で定められているのは、次の3つです。

| 理由 | 例えばこんな場面 |
|---|---|
| 虐待 | 長年にわたる暴力、介護が必要な親の放置 |
| 重大な侮辱 | 人格を否定する暴言を繰り返す、公の場でひどく辱める |
| その他の著しい非行 | 親の財産を無断で使い込む、親に多額の借金を肩代わりさせる |
ポイントは、相手が被相続人本人に対して行ったことかどうかです。そのうえで、家族関係が壊れてしまうほど深刻かどうかが見られます。
例えば、親子でこんなやり取りがあったとします。
「お金を返してくれないなら、もう家には来ないで」
「うるさい、どうせ全部俺のものになるんだから」
これが一度きりの口論なら、廃除までは難しいことが多いです。何年も続き、暴力や財産の持ち出しまであれば、判断は変わってきます。
相続廃除が認められない事例
『これだけされたんだから認められるはず』と思っても、家庭裁判所の判断は厳しめです。相続権を奪う重い手続きだからなんです。
- 一時的な感情のぶつかり合いや、一度きりの暴言
- 親の側にも原因がある親子げんか
- 連絡を取らない、疎遠になっているだけ
- 親の意に沿わない結婚や進路を選んだ
- 非行はあったが、その後に謝罪し関係が修復している
例えば、「何年も連絡がない」「実家に寄りつかない」というだけでは、廃除の理由としては弱いと考えておきましょう。
反対に、日記・診断書・警察への相談記録・お金の出入りが分かる通帳など、具体的な記録があると判断の材料になります。思い当たる出来事があれば、日付と内容を残しておいてみてください。
- 暴力を受けた日のメモや、ケガの診断書
- 暴言のメールやメッセージの画面
- 警察や役所の窓口に相談した記録
- 勝手に引き出されたお金が分かる通帳や取引履歴
推定相続人の廃除の手続き
廃除の手続きは、生前に行う方法と、遺言で行う方法の2つです。
- 生前廃除: 被相続人本人が、家庭裁判所に廃除を請求する
- 遺言廃除: 遺言書に廃除の意思と理由を書き、亡くなった後に遺言執行者が家庭裁判所に請求する
- 家庭裁判所が審判で、廃除を認めるかを判断する
- 認められたら、戸籍の届出をして戸籍に記載される
遺言で廃除する時は、遺言執行者を指定しておくのが安心です。理由を具体的に書いておかないと、亡くなった後に証明する人がいなくなってしまいます。
生前廃除と遺言廃除、どちらがいい?
生前廃除のよさは、本人が元気なうちに自分の言葉で事情を説明できることです。家庭裁判所では、廃除される側の言い分も聞いたうえで判断されます。
ただ、請求したことが相手に伝わるので、関係がさらに悪くなることも。暴力が心配な場合は、身の安全を優先して考えてみてください。
遺言廃除は、生きている間に相手と向き合わずに済みます。その代わり、亡くなった後に遺言執行者が証拠を示す必要があり、記録が少ないと認められにくくなります。
『どちらにしても認められるか不安…』という方は、廃除と並行して、遺言書で財産の渡し先を決めておくのが現実的です。廃除が認められなかった場合でも、遺言があれば取り分を遺留分まで減らせるからです。
なお、遺言がなく相続人同士で遺産を分ける時は、相続人全員で話し合って遺産分割協議書を作ります。廃除された人は、この話し合いに加わりません。
また、廃除はあとから取り消すこともできます。関係が良くなった時は、家庭裁判所に取消しを請求するか、遺言で取り消します。
相続排除と相続欠格の違い
似た制度に「相続欠格」があります。混同しやすいので、違いを表にしました。
| 項目 | 相続人の廃除 | 相続欠格 |
|---|---|---|
| 相続権がなくなる理由 | 虐待・重大な侮辱・著しい非行 | 被相続人を死亡させた、遺言書を偽造・破棄したなど |
| 手続き | 被相続人の請求や遺言で、家庭裁判所が審判 | 手続きなしで当然に相続権を失う |
| 取消し | できる | できない |
| 兄弟姉妹 | 対象外 | 対象になる |
廃除は「被相続人の意思」、欠格は「法律が当然に外す」という違いで覚えておくと分かりやすいです。
廃除された人の子供は相続できる?
実は、廃除された人に子がいれば、その子が代わりに相続します。これを代襲相続といいます。
例えば、長男を廃除しても、長男の子(孫)が長男の取り分を相続することになります。『長男の家系には一切渡したくない』という場合は、孫への遺言の内容まで考えておく必要があります。
代襲相続の範囲は代襲相続とはで詳しく解説しています。
兄弟姉妹は廃除の対象外ですが、もともと遺留分がありません。財産を渡したくないなら、遺言書でほかの人に渡すと書いておけば足ります。
廃除が認められた後の相続では、残った相続人で遺産を分けることになります。相続人の人数が変わると基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の計算に影響する場面もあるので、相続税がかかりそうな家は申告まで見通しておきましょう。
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よくある質問
相続人の廃除は誰でも請求できますか?
請求できるのは被相続人本人です。亡くなった後は、遺言で廃除の意思が示されている場合に、遺言執行者が家庭裁判所へ請求します。ほかの相続人が独自に請求することはできません。
兄弟姉妹を相続から廃除できますか?
兄弟姉妹は遺留分がないため廃除の対象外です。遺言書で兄弟姉妹以外の人に財産を渡すと書いておけば、兄弟姉妹は取り分を請求できません。
相続人の廃除にはどれくらい時間がかかりますか?
家庭裁判所で双方の言い分や資料を確認するため、事情によって大きく変わります。遺言廃除の場合は、亡くなった後に遺言執行者が手続きをするので、その間は遺産分割を進めにくくなる点も知っておきましょう。
廃除されたことは戸籍に残りますか?
廃除が認められると、戸籍の届出をして、その人の戸籍に廃除された旨が記載されます。
まとめ
- 相続人の廃除は、虐待・重大な侮辱・著しい非行をした推定相続人の相続権を失わせる制度です。
- 生前に家庭裁判所へ請求するか、遺言書で意思を示して遺言執行者に請求してもらいます。
- 一時的な口論や疎遠なだけでは、認められにくいです。
- 廃除された人に子がいれば、その子が代襲相続します。
相続人の範囲は法定相続人とはで全体をまとめています。





