「生前に全額預金をおろしておくことです」は正しい?相続税への影響

生前に預金をおろしておくことの相続税への影響を解説する記事のアイキャッチ

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「親が亡くなると口座が凍結されるから、対策は生前に全額預金をおろしておくことです」。そんな話を聞いて、『本当にやったほうがいいの?』と迷っている方も多いはずです。

結論から言うと、預金をおろして現金にしても、相続税は1円も減りません。手元の現金も相続財産だからです。むしろ、使い道が分からないお金があると、税務調査や兄弟の揉めごとの種になりやすいんです。

この記事を読めば、生前に預金をおろすことの本当のメリットとデメリット、代わりにできる備え方が分かります。

目次

生前に全額預金をおろしておくと相続税は減る?

先に結論
  • 預金をおろして現金や金庫に移しても、亡くなった時に残っていれば相続財産です。
  • 相続税は、亡くなった日の預金残高と手元の現金を合わせて計算します。
  • 申告から現金が漏れていると、税務調査で指摘されることがあります。
  • 葬儀代など当面のお金は、払戻し制度や生命保険でも用意できます。

相続税の対象は、亡くなった人が持っていたお金に換えられる財産すべてです。銀行に入っていても、タンスに入っていても、扱いは同じなんです。

『現金なら誰にも分からないのでは?』と思う方もいるかもしれません。ただ、税務署は亡くなる前の口座の入出金を調べられます。大きな引き出しがあれば、そのお金がどこへ行ったかを確認されます。

国税庁の発表では、令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件で、そのうち82.3%で申告漏れなどが見つかっています。1件当たりの追徴税額は867万円です。

おろしておくと困ること

預金を生前におろすと、相続税以外にも困る場面が出てきます。

困ることどうなるか
税務調査引き出した現金の行き先を説明できないと、申告漏れとして指摘されやすい
兄弟との揉めごと管理していた人が使い込んだのでは、と疑われる
防犯自宅に多額の現金を置くと、盗難や火事で失うおそれがある
名義預金の疑い家族の口座に移すと、贈与ではなく亡くなった人の預金と見られることがある

例えば、こんなやり取りになることがあります。

「お母さんの口座、亡くなる前に300万円おろしてあるけど、何に使ったの?」
「入院費と生活費だよ。でも、領収書は取っていなかった」

このように、記録がないと説明に困ってしまいます。親の口座からお金をおろす時は、何に使ったかのメモと領収書を残しておきましょう。

生前に預金をおろしても相続税が減らない理由を示した図解

家族の口座に移すのは贈与になることも

おろしたお金を子や孫の口座に入れると、それは贈与になります。受け取る人ごとに年110万円を超えると、贈与税の申告が必要です。

しかも、2024年1月1日以降の贈与は、相続開始前7年以内のものが相続財産に足し戻されます。亡くなる直前に移しても、相続税を減らす効果はほとんどないんです。

相続放棄を考えている時はさらに注意

親に借金があって、相続放棄を考えている場合も気をつけたいところです。亡くなった後に親の口座からおろしたお金を自分のために使うと、相続を認めたと見られて放棄できなくなることがあります。

『生前におろしたお金なら関係ないよね?』と思うかもしれません。ただ、亡くなった時点で残っていた現金は親の財産なので、使い方しだいで同じ問題が起きるんです。放棄を考えている時は、手をつける前に専門家に確認しておきましょう。

口座凍結に備えるなら何をする?

口座凍結で困るのは、主に葬儀代や当面の生活費ですよね。それなら、全額をおろすより次のような備え方が向いています。

現金をおろす代わりの備え
  • 遺産分割前の払戻し制度を使う(1つの金融機関で150万円まで)
  • 受取人を指定した生命保険に入っておく(受取人がすぐ受け取れる)
  • 当面の費用だけを家族が立て替え、領収書を残す
  • 判断能力があるうちに、家族信託などの方法を検討する

生命保険の死亡保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税になる枠もあります。相続税対策の全体像は相続税対策の方法一覧で確認してみてください。

認知症に備えたい場合は、家族信託の仕組みも選択肢になります。

親の預金が多く、基礎控除を超えそうな家庭ほど、引き出しの記録は税務調査で見られます。口座の動きが多い、すでに大きな引き出しをしてしまった、という方は、申告の前に税理士に相談しておくと安心です。

引き出してしまった時の申告

すでに預金を引き出してしまった方も、慌てなくて大丈夫です。亡くなった時に残っていた現金を相続財産に入れて、正しく申告すれば問題ありません。

『いくら残っていたか分からない』という時は、引き出した額から、領収書などで分かる支払いを差し引いて計算してみましょう。説明できる記録を集めることが、税務調査への備えになります。

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よくある質問

亡くなる直前に預金をおろしたら違法ですか?

おろすこと自体は違法ではありません。ただ、残った現金を相続税の申告に入れなかったり、他の相続人に隠したりすると問題になります。

葬儀代のためにおろしたお金はどう申告しますか?

亡くなった時点で残っていた現金は相続財産に入れ、葬儀に支払った分は葬式費用として差し引きます。領収書を保管しておきましょう。

少額の引き出しでも税務署に見られますか?

日常の生活費程度なら問題になりにくいです。目立つのは、まとまった金額の引き出しや、家族の口座への移動です。

まとめ

この記事の要点
  • 生前に預金をおろしても、残った現金は相続財産で相続税は減りません。
  • 使い道が分からない引き出しは、税務調査や兄弟の揉めごとの原因になります。
  • 家族の口座に移すと贈与になり、7年以内の分は相続財産に足し戻されます。
  • 口座凍結には、払戻し制度や生命保険で備えるのが現実的です。
相続の手引き

相続の手引き 編集部

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