遺言書で一人に相続させる書き方|全財産を妻・子に残す文例

遺言書で全財産を一人に相続させる書き方を解説する記事のアイキャッチ

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『自分が亡くなったら、財産は全部妻に残したい』『家を継いでくれる長男に任せたい』。そう考えて、遺言書の書き方を調べている方も多いはずです。

結論から言うと、全財産を一人に相続させる遺言書は、短い文章で書けます。ただし、子どもや親が相続人になる場合は「遺留分」に気をつける必要があります。この記事では、文例と書き方のルール、もめないための工夫がわかります。

目次

全財産を一人に相続させる遺言書は書ける?

先に結論

「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻○○に相続させる。」と書けば、全財産を一人に相続させる遺言になります。自筆で書く時は、全文・日付・氏名を自分で書いて押印します。ただし、子や親には遺留分があるので、請求された時のことも考えておきましょう。

遺言書がない場合、遺産は相続人全員の話し合いで分けることになります。遺言書があれば、その内容が法定相続分より優先されるんです。

『一人に全部なんて、本当に認められるの?』と思いますよね。遺言の内容としては有効です。ただ、ほかの相続人が最低限の取り分(遺留分)を請求できる場合があります。この点は後でくわしく見ていきます。

遺言書があると相続がどう進むかは、相続と遺言の関係で解説しています。

遺言書で一人に相続させる文例

妻に全財産を相続させる文例

一番シンプルな形です。財産を一つずつ並べなくても「一切の財産」と書けば、すべての財産が対象になります。

文例1:妻に全財産を相続させる

遺言書

遺言者○○ 太郎は、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻○○ 花子(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、前記妻○○ 花子を指定する。

令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○町○丁目○番○号
遺言者 ○○ 太郎 (印)

子ども一人に全財産を相続させる文例

長男に全部を任せたい時も、書き方は同じです。受け取る人の続柄と生年月日を書いて、誰のことかはっきりさせます。

文例2:長男に全財産を相続させる(予備の指定つき)

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の長男○○ 一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、前記長男○○ 一郎が遺言者の死亡以前に死亡したときは、前条により長男に相続させるとした財産を、長男の子○○ 健太(平成○年○月○日生)に相続させる。

第2条は「予備的な指定」と呼ばれます。受け取る予定の人が先に亡くなると、その部分の遺言は効力を失うんです。高齢の夫婦で妻に残す場合などは、入れておくと安心です。

相続人以外に残す時は「遺贈する」

孫や内縁の妻など、相続人ではない人に残す場合は「相続させる」ではなく「遺贈する」と書きます。違いは遺贈と相続の違いで確認してみてください。

自筆で簡単に書く時のルール

遺言書は、決まった形を守らないと無効になることがあります。自筆証書遺言で守るルールは次のとおりです。

自筆証書遺言のルール
  • 本文は全文を自分で手書きする
  • 日付は「令和○年○月○日」と特定できるように書く(「○月吉日」は不可)
  • 氏名を自分で書き、押印する
  • 財産目録をつける場合は、パソコン作成や通帳のコピーでもよい(各ページに署名・押印)
  • 書き間違えた時は、決まった訂正方法があるので書き直すほうが安全
全財産を一人に相続させる自筆証書遺言の書き方のポイントを示した図解

知恵袋などでよく見る失敗

『夫婦で一緒に1枚に書けばいいのでは』と考える方がいます。ただ、2人以上が同じ書面で遺言することは認められていません。夫と妻、それぞれが別々に書いておきましょう。

本文をパソコンで打って、署名だけ手書きにするのもよくある間違いです。自筆証書遺言でパソコンが使えるのは、財産目録の部分だけなんです。

「全財産を妻に任せる」「妻に託す」のようなあいまいな言葉も避けてください。相続させるのか、管理を頼むだけなのかがわからず、手続きで困ることがあります。

自筆の遺言書は、亡くなった後に家庭裁判所で検認を受ける必要があります(収入印紙800円/通)。

法務局の自筆証書遺言書保管制度(手数料1通3,900円)を使えば、検認は不要です。紛失や書き換えの心配も減らせます。

確実性を重視するなら、公証役場で作る公正証書遺言もあります。証人2人が必要ですが、検認は不要です。作り方は相続の公正証書遺言とはでくわしく解説しています。

一人に相続させる時に気をつけたい遺留分

兄弟姉妹には遺留分がない

子どもがいない夫婦で、親もすでに亡くなっている場合。夫が亡くなると、相続人は妻と夫の兄弟姉妹です。

ここが大事なところです。兄弟姉妹には遺留分がありません。「妻に全財産を相続させる」という遺言書があれば、兄弟姉妹は取り分を請求できないんです。子どもがいない夫婦にとって、遺言書はとても効果が大きい書類といえます。

子どもや親には遺留分がある

一方、子どもや親には遺留分があります。全財産を一人に相続させると、ほかの子どもから遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

例えば、夫が亡くなり、妻と子2人が相続人のケース。遺産が4,000万円で、遺言書に「全財産を妻に相続させる」とあったとします。

項目計算金額
全体の遺留分4,000万円 × 1/22,000万円
子1人の遺留分4,000万円 × 1/2 × 1/4500万円
子2人の合計500万円 × 2人1,000万円

子どもたちが請求すれば、妻は合計1,000万円をお金で払うことになります。遺留分侵害額請求は、相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で請求できなくなります。

『うちの子は請求なんてしないはず』と思う方も多いですよね。ただ、子どもの配偶者が口を出すなど、状況が変わることもあります。

付言事項で気持ちを伝える

遺言書の最後に「付言事項」として、なぜこの分け方にしたのかを書き添えることができます。法的な効力はありませんが、家族の納得感はかなり違います。

例えば「長年支えてくれた妻が、この家で安心して暮らせるように全財産を妻に残します。子どもたちには、母を支えてくれるようお願いします」のような書き方です。

全財産を妻に残す時の相続税の考え方

配偶者には相続税の「配偶者の税額軽減」があります。妻が受け取った財産が1億6,000万円か、妻の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。適用には申告が必要です。

ただ、妻が全財産を受け取ると、妻が亡くなった時の相続(二次相続)で、子どもが受け取る財産が大きくなります。二次相続では配偶者の税額軽減が使えないので、家族全体で見ると税金が増えることもあるんです。

財産に土地がある、二次相続まで考えた分け方にしたい、相続税がかかりそうか判断がつかない。こうした場合は、遺言書を書く前に税理士に試算してもらうと、税金まで含めた分け方を決めやすくなります。

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よくある質問

「全財産を妻に相続させる」だけで、不動産の登記や預金の解約はできますか?

遺言書が有効なら、その遺言書を使って手続きを進められます。不動産の所在や口座番号を財産目録として添えておくと、手続きがよりスムーズです。

一人に相続させる遺言書は、兄弟がいると無効になりますか?

無効にはなりません。兄弟姉妹には遺留分がないため、子どもと親がいない場合は、遺言書のとおりに一人が全財産を受け取れます。

遺言書は何度でも書き直せますか?

はい。新しい遺言書を書けば、前の遺言書と食い違う部分は新しいほうが優先されます。書き直す時は日付を忘れずに書いてください。

まとめ

この記事の要点
  • 「一切の財産を○○に相続させる」と書けば、全財産を一人に残せる
  • 自筆なら全文・日付・氏名を手書きして押印。財産目録はパソコンでもよい
  • 受け取る人が先に亡くなる場合に備えて、予備の指定を入れておくと安心
  • 兄弟姉妹に遺留分はないが、子や親には遺留分がある
  • 全財産を妻に残す時は、二次相続の相続税も考えておく
相続の手引き

相続の手引き 編集部

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